水道水やペットボトルの水質基準及び楽しく学ぶ計量証明
水道水が飲めるかどうかは水質検査50項目を実施して合格するかどうかで決まります
水道水は遊離残留塩素を0.1mg/L以上加えていますが、50項目以外にも水質検査を定期的に実施されています 水道水中のカビや農薬の混入も水質検査にてチェックしており、水質に異常があれば給水停止となります
近年、上水道の水をペットボトルに入れてミネラルウォータとして販売している自治体もあります
地震災害時には多く利用されているペットボトルに入れてたミネラルウォータはどのような基準で作られているのでしょうか
ミネラルウォーター類の品質表示ガイドライン
(平成7年2月17日『7食流第398号』改正)により、内容物の表示を定めています< 適用範囲 >
地下水などのうち、飲用適の水(カルシウム、マグネシウム等(硬度)及びpH値を除き水道法第4条に適合する水をいう)を容器に詰めたもので炭酸水を除きます
ミネラルウォーターは水道水よりも水質基準が緩和されています(砒素の濃度が水道水の5倍まで認められています)
また、水質検査の間隔などの規制も緩和されています
ミネラル分の濃度や量については特に規制されていません
水道水は一生涯飲んでも異常がないような水質基準を適用していますが ミネラルウォーターはあくまでも飲料(2~3リットル/日)のみの用途を想定しているため、日常的に料理等に使用することは基準の想定外となります
< ミネラルウォーター類 >
1990年に農林水産省が定めたガイドラインによる種別
1.ナチュラルウォーター
特定水源から採取した地下水 ろ過処理、沈殿処理、加熱殺菌処理をしても良い
2.ナチュラルミネラルウォーター
ナチュラルウォーターの中に無機塩類が溶解したもの
3.ミネラルウォーター
ナチュラルウォーターを原料とし、混合したりミネラル分を調整したもの
4.ボトルドウォーター
飲料に適した水をつめたもの
買い物に行った時は一度ペットボトルに記載されている種類を見てみましょう
子供と一緒に楽しく学ぶ計量証明
水質基準にはmg/Lの単位が使用されていますが1mgはどのくらいの重さなのか分かりますか
単位は以下の通りです
1g(グラム)=1000mg(ミリグラム)
1mg(ミリグラム)=1000ug(マイクログラム)
まず用意するのは人工的に精製された食塩(NaCL)です 通常は食卓塩として販売されています
食塩はどこの家庭にもあり購入しやすい物質ですし 子供の口に入っても安全です
その食塩の結晶は1粒が約2ug(マイクログラム)あります
これを重さの基準として使用します
(例1)
テトラクロロエチレン 0.01mg/L(0.01mgとは10ugと同じ重さ)
10ugとは食塩の結晶が5粒と同じ重さになります
(例2)
水銀 0.0005mg/lL(0.0005mgとは0.5ugと同じ重さ)
0.5ugとは食塩の結晶が1粒の1/ 4と同じ重さになります
例1・例2を参考にして水質基準の50項目を食塩の結晶に置き換えて下さい
食塩の結晶の中で形のいい大きい結晶を基準とする
この食塩の結晶は1粒が約2ug (マイクログラム)あります
水道法水質基準項目と基準値
1.一般細菌 1mlの検水で形成される集落数が100以下
2.大腸菌 検出されないこと
3.カドミウム及びその化合物 カドミウムの量に関して0.003mg/L以下
4.水銀及びその化合物 水銀の量に関して0.0005mg/L以下
5.セレン及びその化合物 セレンの量に関して0.01mg/L以下
6.鉛及びその化合物 鉛の量に関して0.01mg/L以下
7.ヒ素及びその化合物 ヒ素の量に関して0.01mg/L以下
8.六価クロム化合物 六価クロム化合物の量に関して0.05mg/L以下
9. 亜硝酸態窒素 0.04mg/L以下
10.シアン化合物イオン及び塩化シアン シアン素の量に関して0.01mg/L以下
11.硝酸態窒素及び亜硝酸態窒素 10mg/L以下
12.フッ素及びその化合物 フッ素の量に関して0.8mg/L以下
13.ほう素及びその化合物 ほう素の量に関して1.0mg/L以下
14.四塩化炭素 0.002mg/L以下
15.1,4-ジオキサン 0.05mg/L以下
16.シスー1,2-ジクロロエチレン及びトランス1,2ジクロロエチレン 0.04mg/L以下
17.ジクロロメタン 0.02mg/L以下
18.テトラクロロエチレン 0.01mg/L以下
19.トリクロロエチレン 0.01mg/L以下
20.ベンゼン 0.01mg/L以下
21.塩素酸 0.6mg/L以下
22.クロロ酢酸 0.02mg/L以下
23.クロロホルム 0.06mg/L以下
24.ジクロロ酢酸 0.03mg/L以下
25.ジブロモクロロメタン 0.1mg/L以下
26.臭素酸 0.01mg/L以下
27.総トリハロメタン(四成分の総和) 0.1mg/L以下
28.トリクロロ酢酸 0.3mg/L以下
29.ブロモジクロロメタン 0.03mg/L以下
30.ブロモホルム 0.09mg/L以下
31.ホルムアルデヒド 0.08mg/L以下
32.亜鉛及びその化合物 亜鉛の量に関して1.0mg/L以下
33.アルミニウム及びその化合物 アルミニウムの量に関して0.2mg/L以下
34.鉄及びその化合物 鉄の量に関して0.3mg/L以下
35.銅及びその化合物 銅の量に関して1.0mg/L以下
36.ナトリウム及びその化合物 ナトリウムの量に関して200mg/L以下
37.マンガン及びその化合物 マンガンの量に関して0.05mg/L以下
38.塩化物イオン 200mg/L以下
39.カルシウム、マグネシウム等(硬度) 300mg/L以下
40.蒸発残留物 500mg/L以下
41.陰イオン界面活性剤 0.2mg/L以下
42.ジオスミン 0.00001mg/L以下
43.2-メチルイソボルネオール 0.00001mg/L以下
44.非イオン界面活性剤 0.02mg/L以下
45.フェノール類 フェノールの量に換算して0.005mg/L以下
46.有機物(全有機炭素(TOC)の量) 3mg/L以下
47.pH値 5.8以上8.6以下
48.味 異常でないこと
49.臭気 異常でないこと
50.色度 5度以下
51.濁度 2度以下
※水道法第4条の規定に基づき〔水質基準に関する省令〕 改正 平成27年4月1日施行
残留塩素の測定場所とそのデータの活用方法
遊離残留塩素の測定とは・・・
遊離残留塩素の測定は水道水が施設内に安全に給水されているかどうかを判定するための重要な作業です
水道水は遊離残留塩素を0.1mg/L以上加えています
実際にあった事故例
施設概要 受水槽→揚水ポンプ→高置水槽→給水栓施設管理者より給水栓より異臭や異常な味がすると簡易専用水道検査機関に相談がありました
検査員が受水槽や高置水槽内を点検したところ高置水槽内にカラスの死骸が沈んでいました
給水栓より異臭や異常な味がした原因は高置水槽内にカラスの死骸と判明しました
保健所に通報すると共に水槽内の清掃および消毒をするように施設管理者に助言しました
高置水槽内にカラスの死骸が入った原因は・・・
1.高置水槽の点検用マンホールが施錠の代わりに針金で留めていた
2.施錠の代わりに留めていた針金が腐食しはずれていた
3.高置水槽の点検用マンホールは無施錠状態
4.強風で高置水槽の点検用マンホールが開いてしまった
5.高置水槽内部の水を飲みにカラスが侵入した
6.運悪く強風で再び点検用マンホールが閉まる
7.高置水槽内のカラスは出られずに溺れてしまった
★管理体制は・・・
受水槽や高置水槽の点検用マンホールに施錠をしなかったことと 定期的に受水槽や高置水槽内を点検しなかったことが原因 管理不十分な施設だった
★業者の対応は・・・
施設管理者は他の業者に給水栓の遊離残留塩素・pH値・味・臭気・色度・濁度を測定してもらったが異常無しとの報告を受けていた
業者は受水槽や高置水槽内を点検しないで午前11時頃に水質検査をしたとのこと
受水槽や高置水槽を点検したことの無い業者に依頼したようである
水槽内部の水は朝一番が滞留時間が長いためカラスのような異物が混入した場合は異常が発見しやすい
施設管理者は朝一番の水に異常を感じていたと思われる
昼ごろには水が入れ替わるために異常を感じなかったと思われる
★遊離残留塩素の変化は・・・
水槽内部の水にカラスが混入したため遊離残留塩素が0.7mg/Lから遊離残留塩素0.3mg/Lに低下
カラスが1羽混入しただけで遊離残留塩素0.4mg/L低下する
大量の有機物が混入するとさらに遊離残留塩素は低下する
水質検査を実施する時間帯によって結果は異なる
測定時間および測定方法を再検討してください
上記の場合は通常の遊離残留塩素0.1mg/Lより高く遊離残留塩素0.3mg/Lに維持されていたため病人は発生しなかった とはいえ管理不足は許されません
基本的に有機物が水槽内に混入すると給水栓の遊離残留塩素・pH値・味・臭気・色度・濁度の測定値に異常が現れる
遊離残留塩素・pH値・味・臭気・色度・濁度の測定には測定した時間が問題になる
たとえ水槽内部に死骸があっても気づくことは無い
遊離残留塩素0.1mg/L以上は給水施設が正常とは言えない
給水施設ごとに通常の遊離残留塩素値を見極めること
施設管理者はいつもと違わないかと注意を払うことが必要
遊離残留塩素の測定ポイント
施設概要 受水槽→揚水ポンプ→高置水槽→給水栓の場合では・・・
< 測定ポイント 4箇所>
水道メーター→(A)→受水槽(Bは水抜き管の水)→揚水ポンプ→高置水槽(C水抜き管の水)→給水栓(D)
A:受水槽手前の流入管の水(直結栓の水)
B:受水槽の水抜き管の水
C:高置水槽の水抜き管の水
D:部屋の給水栓
ただし、給水栓(D)がたくさんある施設はDのポイントを増やす
< 測定方法 >
測定方法は各給水栓および水抜き管を30秒開けてから容器に水を採り、遊離残留塩素を測定し記録する
< 測定時期・回数 >
1 月曜日と金曜日の朝一番の水
2 3月、6月、9月、12月の4回測定
< データの判定方法 >
1 施設内全体の遊離残留塩素の変化
2 遊離残留塩素の低い給水栓
3 月曜日の朝一番の水に遊離残留塩素が検出されないが、金曜日の朝一番の水は検出される場合は水道水が循環しているため飲用できる
4 遊離残留塩素が月曜日や金曜日の朝一番の水にも検出されない場合は飲み水とはしない
水道水が循環していないため手洗いだけとする
5 給水施設ごとの通常の遊離残留塩素値を見極めることができる
上記の判定方法はビル管理施設や学校のように給水栓が多く存在する施設に有効です
学校では遊離残留塩素が金曜日の朝一番の水にも検出されない場合は飲み水としない
(子供たちにも分かるように「この水は飲めません」と書いた赤いプラカードを設置し小さな赤いプラカードを各給水栓に設置する)
飲める水は小さな青いプラカードのみ各給水栓に設置する
受水槽から上水道が給水されていても遊離残留塩素が検出されにくい給水栓は飲ませない
どこの給水栓でも5分から15分もの時間蛇口を開けて水道水を出せば遊離残留塩素は検出される
子供たちは蛇口を30秒ほど開けてすぐに水道水を飲んでしまうため、衛生管理の観点から見ると従来の測定方法だけでは不十分で併用測定が望まれる
上記の方法は法律的に規制はありません。子供たちの安全を確保するための一つの手段ですので参考としてください